今日は、出資の払戻しと定款変更について考えてみたいと思います。
まず、金1000万円を出資して設立された社員1名の合同会社であることを前提とします。この社員が、急遽、現金が必要となり、500万円の出資の払戻しを行います。なお、出資分は100万円を資本金に計上し、残りの900万円は資本剰余金に計上してあり、資本金の額の減少の必要はないことを前提とします。
さて、この場合、どのような手続が必要でしょうか。
合同会社においては、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、出資の払戻しを請求することができないとされているため、定款の変更をする必要があります。
定款に記載された出資の目的及びその価額は、金1000万円となっていたでしょうから、この部分を金500万円とする定款の変更手続を行うことになります。
ここまでが基本の確認です。
さて、少し事案を変えましょう。先ほどの事例は現金出資の場合でしたが、これが現金ではなく不動産を出資した場合だったらどうでしょう。たとえば、定款に「〇県〇市〇番地〇の建物 木造平家建て〇〇㎡ この価額金1000万円」という記載になっており、実際の帳簿価額も1000万円となっている場合です。
社員は現金が必要ですので、この建物を払い戻すよりは、現金で払戻しを受けたいという希望があります。
会社法624条1項に、出資財産が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げないとあり、この社員は現金での払戻しを請求することができることがわかります。
しかし、この社員が払戻しを受けたい額は、建物の価額の半分の500万円です。定款の変更はどのような内容にする必要があるでしょう。
半分を払い戻すことになるので、「〇県〇市〇番地〇の建物 木造平家建て〇〇㎡ の持分2分の1 この価額金500万円」と変更するのでしょうか。
これは、私が作った教室事例であり、こうした払戻しは、現実にはないでしょうから、類似の内容を解説している文献を見つけることができませんでした。
建物の価額の半分を払い戻すということは、出資された建物の持分半分に相当する部分の払戻しですから、前記のように定款の変更をするという考え方も当然にあり得ると思います。ただ、現実には、現金で払い戻し、建物の半分の持分を払い戻すわけではないので、この建物のすべてを会社が保有したままですし、あとでわかりにくくなってしまうような気がします。
そうかといって、出資の目的及び価額として「〇県〇市〇番地〇の建物 木造平家建て〇〇㎡ この価額金500万円」という記載にすると、将来、この不動産全部を払い戻すことが可能なようにも思え、これは問題がありそうです。
やはり、建物の持分2分の1相当分を金銭で払い戻したのですから、前記のように持分を2分の1とする定款変更をするのが妥当なのかもしれません。
とても悩ましいですが、こうしたケースの場合は、いっそ、出資者も含めた社員全員が同意するのであれば、出資の目的及びその価額を変更して、「金500万円」と金銭出資の形してしまうのがわかりやすいようにも思えます。しかし、出資の目的及びその価額の記載は、社員が間接有限であることが前提の合同会社においては、過去の事実という意味もあると思いますし、このような定款の変更が可能なのかどうかについても、はっきりしません。
正直なところ、どうするのが正解なのか、考えると難しくて結論が出し切れておりません。前記のとおり、こういう払戻しは、現実には行われないだろうと思いつつも、万が一、こうした相談をいただいたらどうしようかと、余計な心配をしてしまい、とても悩ましく感じました。
ただ、こうした相談はないかもしれませんが、合同会社の現存数は確実に増えており、現実問題として、今後は、実務の中で、いろいろと難しいご相談をいただくことが増えていくのかもしれないと思いました。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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