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利益剰余金の資本組入れ

2024年06月15日 15:15

 株式会社については、会社法448条と450条に、準備金、あるいは、剰余金を資本金に組み入れることができる旨の規定があります。この準備金、あるいは、剰余金は、資本項目に限定されず、利益項目(利益準備金、利益剰余金)からも組み入れることが可能です(注1)。

 では、合同会社でも同様に、利益剰余金を資本金に組み入れることは可能でしょうか。

 この点について、会社法には規定がありません。では、組み入れることができないかというと、会社計算規則30条1項3号と31条2項4号に、資本剰余金を資本金に組み入れることが可能であることを前提とする規定があり、資本剰余金については可能であることがわかります。

 それに対し、利益剰余金については規定がないため、合同会社においては、利益剰余金を資本金に組み入れることができないという結論になりそうです。

 「なりそうです」というと、なんだかあやふやな表現ですが、これには理由があります。

 まず、合同会社の利益剰余金の性質を考えてみましょう。

 本年3月27日の本ブログ(合同会社の社員加入時の計算 )に記載しましたとおり、合同会社(をはじめとする持分会社、以下、同じ)では、損益の分配と利益の配当が明確に区別されており、決算が確定して各社員に分配された損益は、各社員が(利益の)配当を請求することができます。

 この点は、株式会社においては、剰余金の配当を決議しないと、株主は会社に対して具体的な請求権がないのと異なるといえるでしょう。

 合同会社においては、社員から利益の配当を請求しないうちであっても、具体的な債権とまでいえるかどうかは別として、当該社員の持分の一部を構成しており、その社員のものだといえるでしょう。

 会社の決定だけでその利益剰余金を資本金に組み入れると、その社員について計上された利益剰余金が減少するため、当該社員の利益の配当をする権利を侵害することになります。そのため、会社の決定だけでは、資本金に組み入れることはできないと考えます。

 ただ、そうであれば、当該社員が同意すれば、組み入れることは可能だと思います。ただし、会社法には特に規定がないため、この場合は、資本組入れではなく、当該社員が、自身の利益配当請求権を現物出資するか、一度、配当を受けて、その財産を出資する必要があるのだろうと思います(注2)。


注1)会社法施行時は資本項目に限定されていましたが、その後、会社計算規則の改正され、現在は利益項目からも可能となっています。

注2)立花宏『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論第2版』(中央経済社)170頁

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