今回は、前回の続きです。
前回は、持分の払戻しは、大雑把に言えば、簿価での計算では計上されていない未実現の利益等を計算して、各社員への配分額を算定して、払戻額を計算する意味を有し、定款に損益分配の定めがあれば、それに従って分配すると考えることもできるのではないかという提案をしました。ただ、異なる考え方もありえるということも書きました。
今回は、この異なる考え方のひとつを検討し、もう少し深堀りしてみようと思います。
想定するのは、前回と同様、以下の状態の会社で、Bが退社したため、持分の払戻しを行うという事例です。会社全体の時価評価は600です。
資本金 資本剰余金 利益剰余金 合計
A 100 0 100 200
B 100 0 0 100
この会社において、定款に、Aが1、Bが2の割合とするという、損益分配の規定があるものとしましょう。前回の考え方に基づけば、会社の時価評価600-社員資本簿価300の残額300を、Aに100,Bに200分配したと仮定し、Bの簿価の持分100と合わせて、300が持分払戻額ということになります。
ところで、それぞれの出資ですが、Aが土地100を出資し、Bが現金100を出資したものだとします。
また、この会社が得る利益は、Bの技術貢献度が大きいため、損益分配の割合については、Aが1、Bが2の割合規定を設けていたという想定にします。
今回、会社を時価評価したころ、600になった要因は、Aが出資した土地の価額が出資時は100であったところ、400に評価が上がったものだと仮定したらどうでしょう。
損益の分配比率は、あくまでも、Bの技術による会社の事業への貢献度を勘案したものだったとしたら、土地の時価評価が上がったための未実現利益300をAが1、Bが2の割合で配分することは、AとBが想定していたものとは異なるのではないでしょうか。損益計算書でいえば、損益分配の割合は、経常利益のところまでを想定しており、土地を売却したと仮定した利益は特別利益ですから、この部分は定款規定では想定していなかったとも言えるかもしれません。
そうすると、この未実現利益はどのように配分するのが妥当でしょう。これは、当事者であるAとBの意向がどのようなものかによるのだろうと思います。
そんなことを考えてみたところ、時価評価部分について、損益の分配比率に応じて分配することに合理性がある場合もあるとは思いましたが、この点は当事者の意思次第であり、やはり、持分の払戻額の計算については、別に定款に規定しておくべきなのだろうと考え直しました(※)。
合同会社をはじめとした持分会社の計算は、まだまだ、理解しきれていないと、あらためて考えさせられました。
※)こういう想定であれば、損益分配の割合についても、規定の仕方をもう少し工夫する必要があるのだろうとも思いました。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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