法務省のウェブサイトをみたところ、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会で会社法の見直し関係が検討されているようです。その第1回の会議が4月23日に開催されたようで、資料等が公開されていました。
内容はそちらをご覧いただきたいのですが、個人的に気になったのは、合同会社についての改正も議題となっていたことです。
その内容について、大雑把に記載するのは難しいのですが、検討してみましょう。
まず、合同会社が無対価で組織再編行為をした場合、資本剰余金が増加する場合がありますが、無対価であるため、定款の出資の記載は変更がありません。
たとえば、社員が一人のみの会社で、出資の価額が100、資本剰余金が100の会社を想定します。組織再編行為をして、資本剰余金が1000になったとします。この社員が出資の払戻しをしようとすると、自分自身の資本剰余金が1000あるのに、100しか払戻しをすることができません。出資の払戻しの制限のひとつに、定款を変更して出資の価額を減少した額が限度というものがあり(会社法632条)、定款に記載された出資の価額は100であるため、この額が限度ということです。
今回の会議で検討されたのは、残りの900について、株式会社のように剰余金の配当をできるようにすべきだ、というものでした。
なぜ、そのような問題がおきるかというと、たとえば、合同会社を完全親会社とする株式交換を計画した場合、対価あり(持分のみ)だと、現在の会社計算規則では株主資本等変動額をすべて資本金にしなければなりません(注)。登録免許税等の問題を考慮してか、将来の資本金の額の減少のことを考慮してか、こういう場合、無対価で株式交換をし、すべて資本剰余金に計上することがあるようです。対価ありだと、出資の価額として定款に記載されますので、出資の払戻し限度額が増えるのですが、無対価だと出資の価額として定款に記載されないため、増えた資本剰余金の払戻しができないことが問題だということのようです。
しかし、個人的には、これは会社法改正をするより、会社計算規則を改正して、対価ありの場合でも資本剰余金に計上することができるようしたほうが簡単なのではないかと思いました。もちろん、対価のすべてが持分の場合は債権者保護手続が必要ないため、資本金に計上することを義務付けているという面があるのかもしれません。一方、株式交換は、株式の現物出資行為ともいえる行為であり、あらたな出資の場合は、株式の現物出資であっても、合同会社では資本金に計上することは義務付けられていないことを考えると、株式交換の場合に資本金に計上することを義務付けることに、少し疑問に感じていたからです。
なにか、ほかにいろいろと検討すべき点があるのかもしれませんが、なんとなく、個人的は、まだ、この会社法改正の論点については、自分の中で消化できずにおります。もう少し、検討してみたいと思います。
注)拙著『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論第3版』(中央経済社)316頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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