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「出資の価額」とは

2025年01月17日 16:35

 持分会社の社員について、その「出資の目的及び価額(又は評価の標準)」は定款の必要的記載事項とされています(会社法576条1項6号)。では、この中の「出資の価額」とはどのようなものでしょうか。

 個人的には、株式会社における募集株式発行の際の払込金額や現物出資財産の価額(会社法199条1項2項及び3号)と同じように考えています。

 このうち、募集株式の発行の際の現物出資財産の価額については、郡谷大輔ほか『会社法の計算詳解【第2版】』(中央経済社、2008)194頁に次のような記載があります。

 「募集事項として現物出資財産の価額を定める場合における当該価額は、相当な範囲で当事者が合意した額を定めればよい。

 これは有利発行、不公正発行(略)などの判断に用いられるものであり、必ずしも会計処理上の価額とは、合致しない。

 他方、会計処理上、取り扱うべき帳簿価格は、原則として、給付された日の時価(略)である。」

 これを合同会社に当てはめると、定款に記載する出資の価額は、定款の作成(変更)にあたり、当事者である社員が合意した額を定めればよいということだろうと思います。

 他方、合同会社を前提とすると、社員は間接有限責任ですから、債権者にとっては会社財産のみが責任財産ですので、登記される資本金の額は重要な情報であるといえ、これを計上するための現物出資財産の帳簿価額は給付された日の時価で計算するということです。

 そのため、必ずしも、定款に記載された「出資の価額」と、資本金の額(及び資本剰余金の額の合計)は、必ずしも合致しないということになります。

 たとえば、合資会社の有限責任社員を前提とした解説ですが、相澤哲編著『会社法立案担当者による新・会社法の解説』(商事法務、2006)156頁に次のような記載があります。

 「会社債権者にとって責任財産となるのは、会社財産と未だに出資されていない出資だけであるから、既履行部分についての過去の評価差額について、直接利害を有するものではない。」

 合資会社の有限責任社員は債権者に直接の責任を負いますが、その範囲は、未履行の出資部分だけなので、既履行された部分についてどういう評価がされているのかは、直接の利害関係はないということです。

 合同会社の場合は、社員となる前にすべて出資を履行し、債権者に直接責任を負う部分はないため、社員(の出資の価額や履行済み部分等)は登記されないということにつながるのだと思います。

 誤解を恐れずに言えば、合同会社において定款に定める出資の価額は、定款に別段の定めがなければ、損益の分配や残余財産の分配の基準となりますので、社員同士で納得すれば、それで定めてよいのだろうと思います。

 ただ、その評価が実際の価値と異なると、損益の分配や残余財産の分配、あるいは、持分の計算が実際の価値による計算と乖離することになり、税務上、問題となる可能性が高いでしょうから、現実的には、実際の価値を定めるのが無難なのだろうと思います。 

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