株式会社の一定の登記の申請をする者は、代表取締役等住所非表示措置の申出をすることができます(商業登記規則31条の3第1項)。この申出をすると、「当該登記により登記簿に住所を記載すべき代表取締役等の住所」について、非表示措置が講じられます。
ところで、この会社が上場会社であった場合に、上場会社でなくなったと認められるときは、登記官は、「現に効力を有する登記事項」の非表示措置を終了させるものとされています(商業登記規則31条の3第4項第2号)。
ただし、この場合に、非表示措置の申出ができる登記申請(たとえば、代表取締役の重任登記)が併せてなされ、非表示措置の申出がなされたときは、非表示措置を終了させず、引き続き、非表示措置を講ずるとされています(令和6年7月26日民商116号通達)。
さて、この非表示措置を終了さないというのはどういう意味なのでしょうか。
非表示措置の申出をするのですから、「当該登記により登記簿に住所を記載すべき代表取締役等の住所」について非表示措置が講じられるのは当然のことです。
前記の非表示措置を終了させる対象は、そもそも、上場廃止(株式譲渡制限の設定)の登記申請時に「現に効力を有する登記事項」である代表取締役等の住所ですから、今回申請した代表取締役等の住所ではなく、それにより抹消の記号が付される、これまで現に効力を有していた代表取締役等の住所ということになるのだろうと思います。
本来は、上場廃止の登記申請をするのと併せて非表示措置の申出をしても、上場廃止の登記申請時に現に効力を有する代表取締役等の住所についての非表示措置は終了となるはずです。しかし、商業登記規則31条の3第1項第1号の書面を添付して申出をすれば、現に効力を有する代表取締役等の住所も非表示措置を継続するというのが、この通達の記載の意味なのではないかと考えました。
せっかく申出をしても、抹消済みの、たとえば、重任前の住所が表示されてしまっては、あらためて申出をした意味がないといえるような場合も少なくないと思われるからです。
これについて、通達の解説等を読んでも、十分に理解できているとはいえないのですが、以上の考え方で間違いないでしょうか。
この点について詳しく解説している資料を見つけられないため、悩ましく感じています。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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