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代表取締役を定款で定めるとは

2025年12月02日 09:17

 非取締役会設置会社である株式会社では、「定款」、「定款の定めに基づく取締役の互選」又は「株主総会の決議」によって、取締役の中から代表取締役を定めることができます(会社法349条3項)。

ところで、ふと、「定款」で定めるというのは、どういう定め方をすることが想定されているのだろうかと思いました。

 これについて、ハンドブック(注1)では、「当会社の代表取締役は、取締役何某とする」というサンプルが掲載されていました。

 非取締役会設置会社では、原則として、取締役は各自が代表権を有しますが、この規定により、何某以外の取締役は代表権を制限された状態になるということになります。

 ところで、取締役には任期がありますから、任期満了により改選された場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、定款規定がある限り、何某以外の取締役は代表権が制限された状態になるのだろうと思います。

 おそらく、こうした規定を設けるのは、何某という取締役がこの株式会社の主要な大株主であるなどの事情がある場合なのだろうと想像しました。

 しかし、それであれば、取締役は株主総会で選任するのですから、選任(改選)する株主総会で、代表取締役を何某とするという規定を設ければ足りるようにも思え、いまのところ、個人的には、この規定の意味を完全には理解しきれていないというところです。

 ちなみに、代表取締役を定款で定めることができるという規定が設けられたのは、明治44年改正商法からで、その解説書(注2)では、合同会社の社員と同じ様な定め方をできるようにしたという説明がなされていました。

 当時の商法をみると、「取締役は株主総会に於いて株主中よりこれを選任す」(当時の商法の164条)となっていて、所有と経営が完全に分離していないようにも思え、そうしたことが影響しているのかもしれません。

 ただ、実際に、この定款で代表取締役を定めることができるという規定がどう利用されたかというと、以前の本欄(2025.9.26「代表社員」)でも少し説明しましたが、定款に互選規定による旨を設け、互選で代表取締役を定めるということが行われていたようです。

 これが可能なのかに疑義があったため、昭和13年改正商法で、定款の規定の基づく互選の規定が設けられ、そのような定め方が可能であることが明確にされたという経緯があったようです。

 ちなみに、建設会社の大林組様では、自社の定款を、過去のものを含め、自社のホームページで公開されていらっしゃり、昭和11年に制定された定款には、互選規定が設けられていることがわかります。

 こうした貴重な資料を公開されていらっしゃることは、私のような、調べものが好きな人間にとっては、とてもありがたいことで、この場をお借りして、感謝申し上げます。

 本当にありがとうございます。

注1)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)51頁

注2)法律新聞社編『改正商法理由』(法律新聞社)189頁 

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