今年10月1日から、株式会社の代表取締役等について、住所の一部を登記事項証明書等に表示しないこととすることが可能になりました。詳細は、法務局のウェブサイトにも掲載されておりますので、そちらをご覧いただければと存じます。
今さらではあるのですが、条文を読んでいて、個人的に消化しきれていない部分があり、お恥ずかしいのですが、紹介させていただきます。
この住所非表示措置は、事後的に希望しない旨の申出をすることができます。この申出をすると、住所非表示措置は終了することになります。ところで、この申出をするのは誰でしょうか。
それは、申出をする株式会社の代表者だとお叱りを受けるかもしれません。しかし、条文(商業登記規則31条の3第5項)には次のように書いてあります。
「株式会社が(略)申出をするときは、(略)、申出書又は委任による代理人の権限を証する書面に当該株式会社が登記所に提出している印鑑を押印しなければならない。」
そのまま読むと、申出は「株式会社」がするとされており、その申出書には、「株式会社が登記所に提出している印鑑」を押印しなければならないとなっています。
たとえば、役員等については旧氏の申出をすることができますが、これについては、次のように規定されています(商業登記規則81条の2第1項、第4項)。
「会社の代表者は、(略)申し出ることができる。
申出書又は委任による代理人の権限を証する書面には、申出をする会社の代表者が登記所に提出している印鑑を押印しなければならない。」
この場合は、申出は「会社の代表者」がするとされており、その申出書には、「会社の代表者が登記所に提出している印鑑」を押印しなければならないとなっています。
そもそも、印鑑の提出者は「株式会社の代表者」であって(商業登記規則第9条1項4号)、株式会社ではないはずです。
先月発刊された、民事月報Vol.79No.9に掲載された通達の解説では、「申出の主体は、飽くまで代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社であり、代表取締役等住所非表示措置の対象である代表取締役等ではないため、希望しない旨の申出書には、当該代表取締役等の個人の押印等は不要である」という記載がありました。
もちろん、対象である代表取締役等が主体でないとは思いますが、申出書には、株式会社の代表者が押印をするのではないでしょうか。
そんなことを考えていて、通達(令和6年7月26日民商116号)の別紙様式2の申出書の注を見てみたところ、申出をする株式会社の代表取締役等が登記所に提出している印鑑を押印する旨が記載されていました。
条文はなにかの理由があってそういう規定になっているのでしょうか・・・。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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