(代表社員)
第〇条 当会社を代表する社員(以下、「代表社員」という。)は、〇〇〇〇とする。
合同会社においては、業務執行社員は各自が合同会社を代表するのが原則です(会社法599条1項)。しかし、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から代表社員を定めることができるとされています。
後者の規定の例は、「当会社に業務執行社員が2名以上ある場合は、当会社を代表する社員(以下、「代表社員」という。)1名を置き、業務執行社員の中から、社員の互選によって定める。当会社の業務執行社員が1名の場合は、その者を代表社員とする。」等が考えられます。
なお、定款の定めに基づく社員の互選についてですが、登記実務では「業務執行社員」の互選だと解釈されています(注1、2)。一般に、互選という言葉は、選任母体と被選任資格とは一致する状況を意味していることを理由としています。
しかし、条文上は「社員」の互選により、「業務執行社員」の中から「代表社員」を定めると規定しており、条文上は、互選をするのは、業務執行権のない社員も含めた社員全員を想定しているものと考えるのが自然だと考えられます。
合同会社においては、業務の決定である支配人を定める場合も、業務執行社員が決定するのではなく、原則として、社員の過半数で決定するものとされており(会社法591条2項)、それとのバランスを考えると、代表社員についても、互選の主体は社員であると考えるのが自然だと考えます。ただし、定款で、互選の主体を、業務執行社員(業務を執行する種類の社員)に限定することは、定款自治として認められると考えます。
登記実務においても、この解釈を許容する見解も出てきているように感じます(注3)。
なお、互選の主体である社員が法人である場合、これまでの登記実務の考え方では、当該法人の職務執行者が意思表示をすることになりますが、私見では、当該法人の代表者となります。
ちなみに、社員の互選とはなにかですが、登記実務においては、社員の過半数の一致と考えられています(注4)。
この「互選」の定義について、解説している文献を見つけることは困難ですが、昭和13年改正商法の際の代表取締役についての解説で、もともと認められていた定款で定める方法について、実務において、定款に「取締役の互選により定める」という運用が行われていたため、これを認めたものだという解説がありました。その解説によれば、互選の方法についても定款で定めることを想定しているようで、方法を定めていない場合には、投票により最高点を獲得したものを当選者とするような方法が通例であろう、としています(注5)。
また、組合に関するものですが、大判大正6年8月11日では、互選とは、合議体の一般原則に従い、多数決の意味だとしています(注6)。
これらからすると、私見は、互選の方法については定款に記載があればその方法により、記載がなければ、合議体の一般原則に戻り、多数決により行うものと解釈するのが妥当ではないかと思います。
ただし、登記実務においては、定款に、最多得票者を当選者とする旨の規定があったとしても、その者が過半数の得票を得ていない場合に登記申請が受理されるかどうかははっきりしません。定款に選挙の方法を規定した場合も、「最多得票者を当選者とする。ただし、社員の過半数の得票を得た者がいない場合には、得票数上位2名を候補者として、社員による決選投票を行い、過半数の得票を得たものを当選者とする」といった規定の仕方をしておくのが無難だと考えます。
注1)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)626頁
注2)小川秀樹・相沢哲『通達準拠・会社法と商業登記』(きんざい)287頁
注3)山森航太「ポイント解説 基礎から考える商業登記実務(第4回)」(「登記研究」922号(テイハン)5頁)
注4)南野雅志・三浦富士雄「各種の法人における代表権を有する理事の選任又は選定の方法並びにこれを証する書面について」(「登記研究」810号(テイハン)39頁)
注5)佐々木良一『株式会社法釈義』(巌松堂書店)172頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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