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代表社員に事故あるときは他の業務施行社員が代表権を有する定め

2024年09月16日 15:29

 社員各自が業務執行権を有する合同会社で、「社員が2名以上ある場合は、社員の互選により代表社員を定める。社員が1名の場合は当該社員を代表社員とする」(①)といった定款の定めを設けることは許容されると思います。

 この定款の定めがある、代表社員A、業務執行社員Bの社員2名の合同会社の場合に、Aが退社した場合は、この定款の定めにより、Bは代表権を持つことになると思います。前記の定款規定により、互選により代表社員に定められたなかった社員Bの代表権は制限されていましたが、社員がBのみとなった場合は、前記の定款規定の「社員が1名の場合は~」の定めにより、Bの代表権は制限されない状態となるということです。

 では、たとえば、定款に、「代表社員はAとする。ただし、Aに事故があり、その任に当たることができない場合は、Bが当会社を代表する」(②)という定めをすることは可能でしょうか。

 これについて、大判大7・6・21民六2輯1281頁という判例があったので、ざっくりと読んでみました。

 この判決では、こうした定款の定めは可能だとしています。Aに事故があり、代表社員としての職務を行うことができない場合には、この定款の定めにより、Bの代表権の制限が解かれ、Bは代表権を行使することができることになります。

 ただ、この判例を読み進めると、②の定めは、①の定めとは異なるものと解釈しているように思います。

 というのは、判例によれば、②の定めは、Bの代表権は、Aに事故があり、Aが代表社員としての職務を行うことができない場合に制限されたのであり、第三者が用意に証明することができない内部的事情に基づく制限であって、取引上の安全の観点から、第三者に対して効力はないと解すべきだと言っています。

 つまり、②の規定は、会社法599条3項により代表社員を定めたものではなく、同条5項の、善意の第三者に対抗することができない代表権への制限だということだろうと思います。

 そうすると、登記の面でいえば、この会社においては、A及びBを代表社員として登記することになりそうです。

 しかし、前記の判例の会社においては、Aのみを代表社員として登記していたようです(注)。判決では、登記については、事実としてそうした登記がされていたことだけが記載され、Bも代表社員として登記すべきなのかどうかについては、特に触れられていませんでした。

 個人的には気になる判決ですので、そうした点について解説している文献等がないか、機会を見て、もう少し調べてみようと思いました。

注)ただし、この会社は合名会社で、代表権を有しない社員がいる場合に、代表社員を登記します。

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