
合同会社の代表社員が辞任する場合、どのような手続が必要でしょうか。
社員各自が代表権を持っているような合同会社であれば、社員の意思表示のみで代表社員を辞任することはできず、代表社員を定める定款変更をするか、代表社員は互選により定める旨の規定を設ける定款変更をしたうえで、互選で他の社員を代表社員と定める必要があると思います。
では、定款で定められた代表社員が辞任を希望した場合はどうでしょう。
この場合も、他の社員を代表社員と定める等の定款の変更をする必要があると思います。
では、定款の定めに基づく社員の互選により定められた代表社員が辞任を希望した場合はどうでしょうか。
この点について、登記実務は、代表社員の意思表示のみで辞任することができ、定款と辞任届を添付して申請すれば、登記は受理されているようです(注1)。
しかし、個人的には、定款で定めた場合であれ、定款の定めに基づく互選で定めた場合であれ、代表社員を定めることは、定められた社員の代表権には影響せず、定められなかった社員の代表権が制限されることだと考えています。
つまり、代表社員と定められた社員の代表権はもともと有していた権利ですし、株式会社の株主総会で定められた代表取締役と同様に、当該者の辞任の意思だけでは足りず、辞任したい(代表権を制限してほしい)という意思表示に対する選任母体(すなわち社員の過半数の一致)の承認が必要と考えるべきだと考えております(注2)。
登記実務は、なぜ、定款と辞任届の添付だけで受理しているのでしょうか。
互選を、社員の互選ではなく、業務執行社員の互選だと考えていることが影響しているのではないかと想像しているのですが、個人的には、はっきりとした理由を理解できておりません。
そのため、登記実務では社員の過半数の一致を証する書面は添付しないとしても、実務上は、社員の過半数の一致で辞任を承認しておくのが無難ではないかと考えています。
注1)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)686頁
注2)立花宏『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論第3版』(中央経済社)153頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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