今日は、持分会社の出資の払戻しと持分の払戻しの違いについて考えてみていたのですが、明確な答えが見つからず、また、時間をおいて、考えてみようかと思っていました。
簡単じゃないか。出資の払戻しは、社員に出資部分のみの払戻しをすることで、持分の払戻しは、持分全体を払い戻す(精算する)ことだ、とお叱りを受けてしまうかもしれません。
もちろんそうだと思うのですが、私が悩んでいたのは、払い戻す内容のことなのです。
たとえば、社員Aは、自己が所有していた不動産+現金を出資して社員になったとします。Aが出資の一部の払戻しとして不動産の払戻しを請求した場合はどうなるでしょうか。
この場合、条文上、その不動産を払い戻すのが原則で、定款で、その不動産に相当する金銭等で払い戻すことを可能とする定めを設けることも可能ということになりそうです(会社法624条1項及び2項)。そうすると、出資された不動産を会社が本店として利用していたり、当該不動産を売却することが想定されたりする場合等は、そうした定款規定を設けておく必要があるのでしょう。
では、Aが退社して持分の払戻しを請求した場合はどうでしょう。やはり、払い戻す財産には出資した不動産を含めるのが原則となるのでしょうか。会社法611条3項では、「出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる」とあり、文言上は、その不動産を含めるのが原則で、例外的に、会社の判断で、金銭で払い戻すことが可能であるようにも読み取れます。
この点、民法の組合の脱退時の持分の払戻しを規定する民法681条2項にも同様の規定がありますが、組合は任意に金銭弁済と現物弁済を選択できると解釈されているようです。現物をもって払い戻すと、組合事業を継続することに不便を生ずることがあるからだと説明されているようです。
これに対し、持分会社については異なる解釈がされているようです。
退社した社員の出資した財産が金銭以外の場合でも、金銭をもって払い戻すことを要すると解釈されているようです(通説)。ただし、定款で現物をもって払い戻すことを認めることは可能です。
出資の払戻しと持分の払戻しで、このように異なった扱いとする必要はあるのでしょうか。その理由が理解できずにおりました。
社員の退社を、出資契約を将来に向かって解除することだとイメージし、会社法611条3項の「出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる」という規定ぶりだけみれば、出資の払戻しと同様、現物の払戻しが原則だと考えるのが素直なように思え、悩ましく感じていました。
難しいものですね。
参考文献
神田秀樹『会社法コンメンタール14持分会社【1】』(商事法務、2014)265頁以下
神田秀樹『会社法コンメンタール15持分会社【2】』(商事法務、2018)81頁以下
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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