(利益相反取引の制限)
第〇条 業務執行社員は、次に掲げる場合には、当該取引について、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
①業務執行社員が自己又は第三者のために会社と取引をしようとするとき。
②当会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間において当会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
業務執行社員は、その職務を行うにあたり、善管注意義務を負っています。この義務の一内容として、合同会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることが禁止されており、その不作為義務を具体化した規定だとされています(注1)。
当事者である社員の過半数の承認が必要だとされており、他の社員全員の承認が必要とされている競業取引の承認とくらべて要件が緩和されています。利益相反取引は、合同会社自身が取引の当事者であるため、合同会社の業務執行の一環と位置付けであり、通常の業務執行であれば、業務を執行する社員の過半数をもって決定することができますが、その要件を加重し、業務執行社員以外の社員も含めた社員の過半数の承認を要するものとした規定です(注2)。
この規定に違反し、承認を受けた前記の取引については、民法108条の規定は適用されません(会社法595条2項)。民法108条の規定は、自己契約又は双方代理等に関する規定であり、本人の許諾がない場合は、無権代理人の行為とみなす旨の規定です。
たとえば、業務執行社員が利益相反取引に該当する取引に関する契約を締結した場合、当該契約自体は有効ですが、当事者である業務執行社員以外の社員の過半数の承認がなければ、合同会社にはその効果は帰属せず、承認があれば、合同会社に効果が帰属するということです。
この承認は事前に行われることが必要です。ただし、前記の趣旨からいえば、事後的に承認がなされた場合は、第三者の権利を害しない限り、民法116条の規定と同様に、取引は、契約の時にさかのぼって、効力を生じる(合同会社に効果が帰属する)と考えられます。
注1)神田秀樹編『会社法コンメンタール14 持分会社【1】』(商事法務、2014)163頁
注2)神田・前掲167頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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