私たち司法書士が商業登記申請を受任した場合、商業登記の申請書には代理権限を証する書面(以下、「委任状」といいます。)を添付する必要があります。根拠条文は商業登記法18条です。
当然ながら、委任状には、どのような内容を委任するのかが記載されている必要があります。たとえば、会社の目的を変更したような場合は、「令和〇年〇月〇日付株主総会決議に基づく目的変更登記申請手続に関する一切の件」といった具合に記載します。
そして、添付書面である株主総会議事録は原本を会社で保管する必要がありますから、還付手続をすることになります。根拠条文は商業登記規則49条1項です。
ところで、委任状には目的変更登記申請手続に関する一切の件となっていますから、原本還付はこの委任内容により行うことができるでしょうか。
実は、商業登記規則49条の4項に、「代理人によつて第1項の請求をするには、申請書にその権限を証する書面を添付しなければならない」と規定されており、原本還付については、登記申請の委任とは別に委任が必要とされています。そのため、登記申請内容の委任とは別に、委任状には、原本還付に関する委任内容が記載されている必要があります。
以上は商業登記のお話です。不動産登記申請の際の原本還付(不動産登記規則55条)については、商業登記規則49条4項に相当する規定がなく、質疑応答(登記研究256号71頁)で、委任事項に「〇〇登記申請に関する一切の件」と記載があれば、原本還付についての委任事項が記載されていなくても、原本還付は可能というものがあり、委任状に原本還付の記載がなくても大丈夫なのだそうです。
同じ登記申請に関するものでも、商業登記と不動産登記では、扱いが異なる場合もあるのですね。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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