合同会社においては、社員は、他の社員全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を譲渡することができません。ただし、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を譲渡することができます。
持分の譲渡をすると、定款の社員等の記載を変更する必要があり、原則として、総社員の同意による定款の変更手続が必要となります(会社法637条)。ただし、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によって行うことができます。
以上の規定は、定款で別段の定めをすることが可能です(会社法585条)。
ところで、前記のとおり、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡は、業務を執行する社員全員の承諾により行うことができますが、業務を執行する社員が法人である場合、この承諾の意思表示を行うのは、当該業務を執行する社員である法人の職務執行者ではなく、代表者だと考えられます。
この規定は、原則である他の社員全員の承諾を、業務を執行する社員の承諾に(業務を執行しない社員の承諾を不要とする)、要件を軽減したものだと考えられるからです。
ちなみに、株式会社の株式の譲渡の承認をする場合のこの承認は、「当該会社の承認」(会社法107条2項1号、108条1項4号)とされ、たとえば、取締役会で承認するかしないかを決定することは、業務執行の決定だと考えられます(注)。
それに対し、合同会社の持分の譲渡に関する承諾は、「社員」又は「業務執行社員」が行うものと規定されていますので、会社の業務ではなく、あくまでも、内部的には組合であることから、社員の権限に基づいて行うのだと考えます。
注)会社法416条4項1号で、執行役に委任することができない「業務執行の決定」として、譲渡承認の決定を規定しています。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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