持分会社の社員が死亡した場合には、その社員は退社し、当然には、相続人は持分を承継して社員になることはありません。持分の払戻請求権を相続することになります。しかし、定款に、それを許容する規定があれば、相続人は持分を承継して社員となります。
会社法の規定は以下のとおりです。
(相続及び合併の場合の特則)
第608条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
(2項以下省略)
たとえば、社員が自然人1名のみの場合は、定款にこの規定を設けておいた方がよいと思います。というのは、万が一、社員が突然亡くなった場合は、その会社は社員が不在となるため、解散し、相続人が希望しても継続することもできません(会社法642条1号)。
仮に継続する予定がなくても、この規定は設けておいた方がよいでしょう。唯一の社員が死亡すると、清算人を選任できませんし、法定清算人もいません。事前に定款に定めておかない限り、裁判所に清算人の選任を選任する必要があるからです。
ところで、社員が法人社員1名のみの場合も、同様に定めておいた方がよいのでしょうか。もちろん、定めておいてもよいのですが、個人的にはその必要性は小さいと思っています。というのは、唯一の社員が法人の場合、自然人と異なり、突然、合併して解散することはないからです。その社員が合併の当事者ですし、合併することになったら定款に定めても十分間に合うからです。
逆に、社員が複数の法人社員である場合には、個人的には定款にはこの規定を設けない方がよいのではないかと思っています。
社員が合併により解散する場合、他の社員が合併するまでそれを知らずにいるということはほとんどないとは思いますが、絶対ないとも言い切れないと思います。
合併の場合は、当事者となる社員が合併の相手方と合併契約を締結しますが、その相手方が他の社員にとって望ましい持分承継者とは限らないでしょう。
むしろ、規定を設けておかず、社員が合併をすることになったときに、承継規定を定款に設けることを他の社員に諮るようにしておいた方が、他の社員が、その合併相手が社員となるのにふさわしいのかどうかを判断したうえで承継規定を設けることになり、他の社員の保護に資するのではないかと思うのです。
個人的には、この相続・合併の承継規定というのは、設けた方がよいのかどうか等を考えると、思いのほか、悩ましいものだと感じています。
これまで、個人的には自然人の場合の相続のことを中心に検討してきたのですが、これからは、合併も含め、もう少しこの規定を検討していってみようと思っています。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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