会社・法人登記専門の司法書士事務所です。

持分会社の持分の一般承継の定め(合併)(その3(おまけ2))

2024年10月26日 14:45

 前回、おまけを書いておいて、さらにおまけを書くのかとあきれられてしまうかもしれませんが、一応、今回でまとめとなりますので、ご容赦ください。

 今回は、定款に一般承継の規定を設けるとしたら、どのようなものを設けるべきなのか、ということを考えてみたいと思います。

 まず、個人的には、一般的な定款例で設けられているような「社員が死亡した場合には、その相続人が当該社員の持分を承継して社員となる」というような規定は、暫定的に設けるのであればよいけれど、もう少し具体的な規定を設けるべきだと思い至りました。

 合同会社をはじめとした持分会社は、株式会社のように、株主を、その所有する株式数に応じて平等に扱わなければならないといった要請はありません。そのため、損益分配比率や残余財産分配比率等も、出資額に応じて行う必要はありません。異なる比率を定款に定めることが可能で、広い定款自治が認められています。

 一般承継の規定も同じように考えるべきではないでしょうか。

 人的信頼関係が重視される形態の会社類型ですから、社員それぞれ、社員の状況に応じた内容の相続承継規定を設けることが可能ですし、そうするべきだと考えました。

 たとえば、代表社員(業務執行社員)A、社員Bの社員が2名の会社を想定します。Aがメインの出資者であり、実質的には、この会社のオーナーのような立場だとします。Bはもともと、Aの個人事業時代の従業員であり、法人成りする際に、出資して社員となった、雇われ社員(?)のような立場です。

 Aは、自分が亡くなったら、配偶者が持分を承継して代表者になることを望んでします。しかし、Bが死亡した場合は、その相続人を社員として迎え入れる意思はありません。

 

 この場合、どのような規定を設けるべきでしょうか。Aには相続承継規定を設け、Bには設けないということが考えられます。しかし、司法書士としてはもう少し工夫できるのではないかと思いました。

 というのは、Bが死亡して退社した場合、Bの相続人は社員とはなりませんが、持分払戻請求権を相続しますので、その精算、すなわち、持分の払戻しが必要となります。

 払戻額がいくらになるのかについて、AとBの相続人で見解が異なったりする場合もあるでしょうから、事前に払戻額について、出資額のみとするなどの定款規定を設けておくのが一つの選択肢です。

 ただ、持分の払戻しについては、状況によって、一定の手続が必要になる場合があります(債権者保護手続(会社法627条、635条))。

 そうしたことを考えると、持分の払戻しをしないように規定するのも一つの選択肢だと思います。ただ、しないといっても、Bの相続人が持分の精算をできないというのも酷だと思います。

 よって、AとBとの間で、Bが死亡をすることを始期とする始期付持分譲渡契約を締結し、次のような規定を設けるのはどうでしょう(注1)。

(社員の死亡時の取扱い)

第〇条 社員Aが死亡した場合は、その配偶者であるaが持分を相続して社員となる(注2)。

2 社員Bが死亡し、AとBとの間で締結された令和〇年〇月〇日付Bの死亡を始期とする始期付持分譲渡契約の効力が生ずることを条件に、定款第〇条の社員Bの住所、氏名、出資の目的及びその価額を削除し、Aの出資の目的及びその価額を次の通りに変更する。

     〇県〇市○町〇丁目〇番〇号

     有限責任社員 A 金〇万円

 つまり、Bが死亡した場合は、相続によるものではありませんが、AがBの持分を(特定)承継するということです。

 持分譲渡代金については、相続発生後にAがBの相続人に支払うことになりますが、場合によっては有望な選択肢となり得るのではないかと考えています。

注1)始期付持分譲渡契約に関する記述として、鈴木龍介・本橋寛樹「会社・法人と相続に関する諸問題」(「会報THINK」120号(2022)の101頁)

注2)定款規定を設けるのにあわせて、Aは持分をaに相続させる旨の遺言をする。

お問い合わせ先

立花宏 司法書士・行政書士事務所

〒980-0022
仙台市青葉区五橋一丁目4番24号ライオンズビル五橋702号

022-302-6906

サイト内検索

© 2016 All rights reserved.| は無断で加工・転送する事を禁じます。

Powered by Webnode