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時価評価と出資の払戻し

2024年07月13日 14:36

 前回は、現物出資された財産について、減価償却がされていた場合に、出資の払戻しの請求があった場合のお話でした。

 今回は、現物出資された財産について、時価評価がなされ、帳簿価額が出資時より増えていた場合に、出資の払戻しの請求があった場合を考えています。

 たとえば、出資時の価額が100万円で、出資時には100万円全額を資本剰余金に計上していた有価証券について、時価評価により帳簿価額が150万円となっている場合に、出資の払戻しの請求があった場合です。

 この場合、定款の当該社員の出資の目的及びその価額から当該現物出資財産についての部分を削除することは前回と同様です。

 そして、150万円の財産を払い戻すので、まず、当該財産について計上されていた資本剰余金100万円を減額することになります。では、差額の50万円分はどのように処理するのでしょうか。

 評価益が生じた際、その50万円は、損益となり利益剰余金に計上されているはずです。そうすると、その分を利益剰余金から減少すればよいのでしょうか。しかし、出資の払戻しの場合は、利益剰余金の額からは控除しないものとされており(会社計算規則32条2項ただし書)、これはできません。

 この場合は、その50万円については、出資の払戻しではなく、利益の配当を請求することになるのだそうです(注)。

 しかし、社員が複数の場合、評価益により増加した損益(利益剰余金)は、原則として、社員全員に出資の価額の割合により分配されたはずです。社員が2人で、出資の価額が同じ場合、出資の払戻しを請求した社員には、25万円しか分配されていません。

 そのため、それ以外に利益剰余金が生じていないとすると、剰余金が不足し、少なくとも、合同会社においては当該財産を出資の払戻しすることはできないことになるのだろうと思います。

 出資の払戻しの制度がどのくらい利用されているのかはわかりませんが、現物出資された財産の場合、計算の関係から、難しい問題が生ずる場合もあるかもしれません。

 こうした問題があまり聞こえてこないのは、出資の払戻しの制度はあまり利用されていないということなのかもしれません。

注)神田秀樹編『会社法コンメンタール15 持分会社【2】』(商事法務、2018)〔伊藤靖史〕82頁 

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