出資者予定者がAとBの2名である合同会社を設立したいという相談を受けたとします。
事情を伺ったところ、Bは現在、会社員をしており、半年後に退職する予定のため、Bは半年後に出資を履行し、社員となりたいというご意向です。ただ、会社の設立自体はもう行ってしまいというご意向の場合、どのように対応したらよいでしょうか。
一般的には、まず、Aのみで合同会社を設立しておき、半年後に、Bの加入の手続をしましょうという対応にするのではないかと思います。
しかし、会社自体はAとBで設立するので、定款にはBの名前も入れて欲しいというのが当事者のご意向だったとしたらどうでしょう。
仮に、社員のところをAとBの2名としたとしても、社員Bの規定については、出資の履行がなされないと定款の効力が生じないでしょうし(注1)、Aの出資の履行が完了したことを証する書面等だけ添付して登記を申請したら、法務局は受理しないのではないかと思います。
ただ、定款附則に、「定款第〇条の社員Bの規定は、令和〇年〇月〇日までにBが出資の履行を完了した時に効力を生ずる」という規定を置いていたらどうでしょう。
これに関する会社法立案担当者の見解として、「現時点では、出資を履行せず、社員とはならないが、将来、たとえば、今後1年間の報酬債権を、1年後に出資して社員となるような、将来的な出資の履行に関する定款の定めは、将来の条件付きの入社または出資の価額の増加に関する定款の定めであるものとして取り扱うことができるものであれば、有効である」(注2)というものがあります。
そうすると、定款附則に前記のような条件付効力発生の規定を入れておけば、AとBが作成した定款として有効と解釈する余地があるのではないかと思います。そうであれば、当事者の意向に沿った定款を作成することができます。
また、半年後に、この定款とBの出資の履行を証する書面等、必要な書類を添付して、Bの加入の手続をすることになると思います。
ただ、こうした定款を添付して申請した合同会社設立(やBが業務執行社員である場合の加入の登記)がスムーズに受理されるかどうかは何ともいえません。会社法立案担当者の見解も示しながら、法務局と打ち合わせの上、実行する必要があると思います。
私達司法書士としては、お客様のご意向をできる限り実現する方向で知恵を絞る必要があると思いますので、 こうした予備知識は常にアップデートしていこうと思っております。
注1)出資の増加に関する会社法立案担当者の見解として、「その増加の定款変更の効力は、当該出資に係る払込み等が完了した時に生ずるものと解される」(相澤ほか『論点解説 新・会社法 千問の道標』(商事法務、2006)587頁)というものがあります
注2)相澤ほか・前掲566頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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