(業務の執行)
第〇条 当会社の業務を執行する社員(以下、「業務執行社員」という。)は、〇〇〇〇及び△△△△とする。
合同会社においては、社員各自が会社の業務を執行します。しかし、定款で別段の定めが可能で、特定の社員を業務執行社員と定めることも可能です。
上記の定款の規定は、〇〇〇〇及び△△△△を業務執行社員と定めたものですが、この規定を設けることにより、〇〇〇〇及び△△△△以外の社員は業務執行権が制限されます。
つまり、この定款規定は、実質的には、〇〇〇〇及び△△△△に業務執行権を付与するというよりは、〇〇〇〇及び△△△△以外の社員の業務執行権を制限するという意味を有する規定であり、〇〇〇〇及び△△△△がもともと有していた業務執行権には影響がありません(注1)。
そのため、たとえば、定款で業務執行社員に任期を設けた場合は、上記定款規定の有効期間という意味合いとなり、任期満了に伴い、定款で再度〇〇〇〇及び△△△△を業務執行社員に指定した場合、任期満了と再指定が同時だとすると、重任の登記が必要にも思えますが、この場合も、〇〇〇〇及び△△△△以外の社員の業務執行権の制限期間が延長されたと解釈し、重任登記は不要だとされています(注2)。
ちなみに、業務執行社員の指定は定款で行う必要があります。
民法上の組合では、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、特定の組合員等に委任することができますが(民法670条1項)、それと同様に、内部的には組合である合同会社では、内部的な組合契約ともいえる定款で、業務執行社員を定めることになるからです。
なお、この定款の定めについては、直接、指定する者の氏名を記載することが想定されますが、登記実務上は、定款に、「総社員の同意で定める」、「社員の過半数で決定する」等と定め、その定めに基づき業務執行社員を指定することも可能だと扱われています。
ただ、私見は、このような定め方は避けた方が無難だと考えています。少なくとも、会社法においては、代表社員の定め方として、①「定款」と②「定款の定めに基づく社員の互選」という方法が規定されていますが、これから想像するに、①と②は別であり、②は①に含まれないと解釈できると考えます。
よって、定款に「総社員の同意で定める」、あるいは、「社員の過半数で決定する」と定めることは、「定款」に定めたとはいえず、私見は、定款で業務執行社員を指定する場合は、直接氏名を記載する方法のほか、定款に規定から直接に指定される者が特定されるような定めである必要があると考えます。
注1)ただし、登記上は「業務執行権付与」を原因とする。
注2)平成20年11月21日民商2037号
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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