合同会社では、原則として、社員が各自業務執行権を有しますが、定款で業務執行社員を定めることもできます。
大雑把にいうと、株式会社でいえば、取締役のようなイメージになりますが、この業務執行社員に、職務の執行に対する対価、すなわち、報酬を支払う場合にはどのようにすればよいでしょうか。
株式会社の取締役であれば、会社法361条により、株主総会の決議によって定める旨の規定がありますが、合同会社の業務執行社員については、会社法にはそのような規定はありません。
これについては、会社法593条4項で、民法648条(受任者の報酬)を準用しており、原則としては無報酬で、特約があれば、業務執行社員は報酬を請求することができるということになります(注1)。
前記のとおり、社員は各自業務執行権を有しますが、定款で業務執行を担当する社員を定めることができます。これは、ある意味、社員間で業務執行の担当者を定めることですから、その職務執行の対価も定款に定める必要があるということなのだろうと思います。
では、業務執行社員の報酬については、具体的にはどのように規定すればよいでしょうか。
これについては、各業務執行社員の報酬額について、確定額や支払方法を定めることもできるでしょうし、あるいは、算定方法を定めることもできるでしょう。さらに、一定の社員の同意で定める等といった定め方もできると思います。
ただ、一定の社員の同意等で定めると規定した場合、業務執行社員の報酬額を定めることは、利益相反取引に該当するようです(会社法595条)。利益相反取引の承認は、取引の対象となる相手方の社員を除く社員の過半数の承認が必要です。
書籍に掲載されている定款例では、、業務執行社員の報酬の決定について、対象社員を除く社員の過半数で決定する旨の規定を置いているものが多いと思いますが(注2)、この点を考慮しているのだろうと思います。
注1)神田秀樹編『会社法コンメンタール14 持分会社【1】』(商事法務、2018)〔尾関幸美〕149頁
注2)神﨑満治郎『5つの定款モデルで自由自在 合同会社の設立・運営のすべて 第2版』(中央経済社、2019)61頁、江頭憲治郎『合同会社のモデル定款-利用目的別8類型-』(商事法務、2016)201頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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