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業務執行社員の職務と職務執行者

2024年07月27日 15:08

 業務執行社員とは、持分会社の業務を執行する社員のことをいいます(会社法590、591条)。ところで、法人である業務執行社員は、業務執行社員の職務を行う職務執行者を選任しなければならないとされています(会社法598条)。

 さて、業務執行社員は持分会社の業務を執行する社員ですから、職務執行者は、その業務を担当することになるはずですが、なせ、「業務を行う」ではなく、「職務を行う」と規定されているのでしょうか。

 おそらく、職務執行者の行う"職務"は、持分会社の"業務"とは違うということなのだと思います。

 職務執行者が持分会社の業務を行うまでの過程を考えてみましょう。大雑把にいえば、次の流れだと思います。

①業務執行社員の過半数による業務の決定

②業務執行社員による業務の執行

 ②が持分会社の業務であることは間違いないでしょう。では、①はどうでしょうか。おそらく、これは持分会社の業務には含まれないのだと思います。というのは、持分会社の業務を決定する意思決定の過程ですので、①では、持分会社としてではなく、業務執行社員として意思表示するはずだからです。

 業務執行社員の職務とは、①と②を両方含んだ意味であり、業務の執行を包含した、より広い内容だと言えるでしょう。

 法人である業務執行社員の職務執行者は、②だけでなく、①も行う立場なので、「"職務"執行者」という名前になっているのかもしれません。

 ところで、持分会社の持分の譲渡は、原則として、他の社員全員の承諾が必要ですが、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡は、業務執行社員全員の承諾があれば行うことができます(会社法585条1,2項)。この業務執行社員の承諾は、前記の職務に含まれるのでしょうか。

 個人的には、これは、本来、社員全員の承諾が必要なところ、業務執行社員以外の社員の承諾を不要としたものだと考えていますので、業務執行者としての意思表示ではなく、前記の職務には含まれないと考えています。

 ただ、ちょっと説明しにくいところもあります。

 取締役会を設置している株式会社の株式の譲渡の承認は、原則として取締役会の承認です(会社法139条1項)。これはどういう位置づけになるのでしょうか。非取締役会設置会社では、原則として株主総会の承認ですので、業務執行の決定ではないと思うのですが、取締役会の権限は会社法362条1項に規定されていて、「a.業務執行の決定」、「b.取締役の職務執行の監督」及び「c.代表取締役の選定及び解職」となっています。

 譲渡承認はこのうち、どれに該当するのでしょうか。bやcではないでしょから、aということになるのでしょうか。それとも、139条1項の譲渡承認は、362条1項の権限とは別のものと考えるべきなのでしょうか。

 いろいろ考えると、難しいものですね。

参考)会社法立案担当者 葉玉匡美氏のブログ「会社法であそぼ」2005年11月22日(火)「業務の執行と職務の執行」

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