
非取締役会設置会社を設立する際、定款には本店の所在地(最小行政区画)までしか定めていない場合の具体的な所在場所の決定は、発起人の過半数の一致により決定します。
この過半数の一致は、議決権の過半数なのか、頭数の過半数なのかについて、見解が分かれています(注1)。
登記実務は、議決権の過半数としているようです(注2)。それに対し、会社法立案担当者は、頭数の過半数と考えていたようです(注3)。後者は、民法の組合の業務の執行の方法に関する規定(民670条)に従った方法だとしています。
組合的性質を有する合同会社を主な研究フィールドにしている私としては、後者の考え方が理解しやすく感じました。
民法の組合では、組合員には2つの立場があります。出資者という立場と、業務執行者という立場です。たとえば、取締役の選任であれば、出資者の立場で行うので、議決権ベースと考える流れが自然だと思います(会40条1項)。それに対し、本店所在場所の決定は、業務の決定ですから、業務執行者の立場での意思表示であり、頭数と考えるべきなのではないか、と考えました。
そんなことを考えていたら、会社法立案担当者の葉玉匡美氏の論考「司法書士のための会社法の諸論点」(「登記情報」555号61頁)を見つけ、読んでみると、まさにそのことが書いてありました。少し長くなりますが、引用します。
「発起人というのは2つの立場があります。1つは設立事務を行う受任者としての立場、要するにその設立の責任者としての立場です。もうひとつは、発起人は必ず1株以上引き受けなければなりませんから、出資をするものとしての立場です。この2つの立場を併有しているのが発起人です。引受人としての立場を重視するのか、設立事務の責任者としての立場を重視するのかによって、議決権の過半数なのか、それとも発起人の過半数なのかが決まることになりますが、例えば本店の所在場所の決定や支店の所在場所の決定というのは、どう考えても過半数以上出資したから、ここにするという話ではありませんね。」
まさに、私の考えていたことが書いてありました。
注1)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)89頁
注2)平成18年3月31日民商782号通達
注3)相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔『論点解説 新・会社法』(商事法務)15頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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