前回の「商号」に続いて、今回は「目的」です。
(商号)
第1条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.〇〇〇〇
2.〇〇〇〇
3.その他前各号に附帯又は関連する一切の事業
目的とは、会社が行うべき事業といいます(注)。
非営利法人の場合は、当該法人の目的とその目的を達成するための事業を記載することが多いでしょう。目的と事業を別の条文にすることも少なくありません。
それに対し、会社は、営利(事業活動によって得た利益を構成員に分配すること)を目的とした社団であることから、上記のように、営利の目的を達成する事業のみを記載することが多いと思われます。しかし、会社であっても、当該会社の達成すべき目的を記載することは否定されません。
なお、この目的と区別が難しいものに、会社の企業理念や使命等があります。たとえば、「当会社は、世界中の人々が幸福に暮らすことができる社会の実現に貢献するため、次の事業を行う」という内容が記載されていた場合、この部分は目的の一部だとして、登記すべき事項に記載すれば、登記されるでしょうか。
目的といえば目的なのかもしれませんが、個人的には、会社が行うべき事業というよりは、企業理念に近いように感じます。
ところが、「当会社は、IT技術を通じて、世界中の人々が幸福に暮らすことができる社会の実現に貢献するため、次の事業を行う」となると、目的の一部ともいえるようにも思えます。
こうした内容が目的だと判断され、登記されるかどうかは、最終的には、法務局において判断されることになりますが、営利法人の場合には、理念といえるような内容は、(事業)目的とは別に、企業(経営)理念の条項を別に設けるか、定款の前文として設ける等、疑義が生じないように、定款の作成を工夫するのが望ましいのではないかと思います。
なお、日本公証人連合会のウェブサイトに掲載されている定款例にある(注)では、「企業理念を第2条に記載し、目的を第3条に記載する例があります。その場合、企業理念が広範な事業目的に一定の制限を加えているものと解されています。」という記載がありました。
個人的には、事業目的に一定の制限を加えているということは、法人としての権利能力の範囲に制限を加えているということになると思います。それであれば、むしろ、登記して公示すべき内容なのではないかと思いました。
つまり、判断の基準として、事業目的に一定の具体的な制限を加えるような内容であれば目的の一部であり、そうでなければ、企業理念といえるのかもしれません。
なんだか、今回は、感想文のようになってしまいました。次回は、もう少し実務の参考になるような内容となるようにしたいと思います。
注)筧康生・神﨑満治郎・土手敏行『全訂第3版詳解商業登記 上巻』(きんざい)522頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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