前回、前々回に引き続き、テーマは「目的」です。
2.「目的」の明確性
目的の明確性とは、定款に記載され、登記された目的の意義が明瞭であって、登記事項証明書等を見た一般人が、その目的の語句の意義を理解することができることを言います。つまり、明確性があるかどうかは、社会通念に従って判断されることになります。
目的の中に特殊な語句が含まれる場合、たとえば、それが専門用語で、専門家にとってはその意味が明瞭ではあっても、一般人には理解できないもの、あるいは外来語で通常の国語辞典や市販されている用語辞典に掲載されていないようなもの、あるいは、インターネット等で検索しても容易にはその意味が判明しないものは明確性があるとはいえません。
また、法令に用いられている語句は、一般的に明確性を有すると判断して差し支えないと考えられます。法令に用いられている語句は一般人であれば理解できるような語句だという前提に立って用いられているからです。
なお、かつては、目的の記載はすべて日本語で記載する必要がありました。しかし、社会情勢の変化等から、ローマ字を含む表記が日常的に使用され、社会的に広く認知されており、逆に、ローマ字を使用した方が日本語で表現するよりもわかりやすいような語句も出てきています。たとえば、「OA機器」や「LAN工事」等が例です。
そこで、①社会的に認知されている、②目的の明確性の要請に反しない、のいずれの要件にも該当する場合は、ローマ字を含む語句を使用することも差し支えないものとされています(注1)。
ちなみに、目的の記載中に法令名や条文番号を掲げる事例もありますが、法改正があった場合には、目的が変更されたものとみなされず、定款変更が必要だと解釈されているようですので、可能な限り避けることが望ましいと考えられているようです(注2)。
注1)平成14年10月7日民商2365号回答
注2)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)10頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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