今回も引き続き、テーマは「目的」です。
3.「目的」の適法性
会社は、強行法規又は公序良俗に違反する事業を目的とすることはできません。そもそも、強行法規又は公序良俗に反する行為は無効ですから、そうした行為を行う事業を目的として掲げることができないのは当然のことといえます。
適法性を欠く目的の例や論点の主なものとして、次のようなものがあげられます。
①一定の資格を有する者でなければ営むことができない業務
弁護士や司法書士等一定の資格者に限って認められている業務を会社の目的とすることはできません。これに対して、たとえば、不動産鑑定士という資格がありますが、不動産鑑定を会社の事業目的とすることは可能だとされています(昭和49年12月28日民四426号)。これは、不動産鑑定という事実行為を行うについて一定の資格が要求されているのであって、会社がその行為を引き受け、資格を有する者にその事実行為を行わせることは禁止されていないという理由です。他に、こうしたものの例として理髪や美容等があります。
②営業免許を要する業務
一定の事業を営むことについて官庁の免許等を要する場合には、免許を得なければ業務を営むことができません。いわゆる営業免許です。しかし、会社の目的に含まれていなければその事業を営むことができませんから、免許を受ける前に会社の事業目的に掲げる必要があります。そのため、営業免許を得ていない段階でも、そうした目的を掲げた会社の設立登記や目的変更登記は受理されます。
ただし、当該事業を営むためには一定額の資本金の額が要求される場合もあり(銀行法5条等)、その一定額に満たない額を資本金の額とする会社の設立登記や目的変更登記が申請された場合は、当該登記申請は受理されないと考えられます。
③法律の施行前に、当該法律で規律される事業を目的に掲げること
新たに法律で規律される事業についても、当該法律の施行前に包括的な禁止規定が存在していない限り、当該法律の施行前にこれを法人の目的とする登記の申請があったときは、これを受理して差し支えないとされています。ただし、当該法律の施行を停止条件として定款を変更する措置をとることが望ましいと考えられています。
参考文献
松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)
筧康生・神﨑満治郎・土手敏行『詳解商業登記全訂第3版』(きんざい)
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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