合同会社の定款には、「社員の氏名又は名称及び住所、社員の全部を有限責任社員とする旨、無限責任社員又は有限責任社員のいずれかであるかの別、出資の目的及びその価額又は評価の標準」を記載しなければなりません(会社法576条1項4号~6号、4項)
このうち、「社員の全部を有限責任社員とする旨」については、合同会社の社員は全員、有限責任ですから、それを明らかにする趣旨だと言えます。
「社員の氏名又は名称及び住所」については、内部的には組合である合同会社において、出資をして共同の事業を営もうとする組合契約の当事者が誰であるのかを明らかにする趣旨だと考えられます。
比較として、株式会社においては、株主の氏名又は名称及び住所は定款の記載事項ではありませんが、これは、株式会社が内部的にも社団であることが理由だと考えられます(注)。
ちなみに、株式会社を設立する場合、発起人が定款を作成しますが、発起人の氏名又は名称及び住所は定款の記載事項です。設立に関する業務を行い、その責任を負う者を明らかにするという趣旨だと考えられますが、発起人は、株式会社設立という共同事業を営む組合ともいえますから、その当事者を明らかにするため、記載するとも考えることができるでしょう。なお、この点は、あくまでも私見であることをお断りしておきます。
「出資の目的及びその価額又は評価の標準」については、社員の(有限)責任の範囲を明確にする趣旨だと考えられます。
そのため、出資の目的は、その客体を具体的に記載する必要があります。金銭であれば、その金額を記載すれば足りますが、その他の財産の場合は、その財産を特定するに足る記載が必要となります。たとえば、土地であれば、所在場所や地目、面積等を記載する等が考えられます。
また、価額又は評価の標準については、共同の事業のために出資すべき財産の価額を明らかにするとともに、会社債権者に直接の責任を負う合資会社においては、その責任の範囲を明確にするという意味が重要となりますが、間接有限責任社員で構成される合同会社においては、損益の分配や残余財産の分配等の原則的割合の基準となる「出資の価額」(会社法622条、666条)としての意味が重要だといえるでしょう。
注)組合と社団の違いですが、「構成員が相互の契約関係によって直接結合する団体を組合、構成員が団体との間の社員関係により団体を通じて間接的に結合する団体を社団」だと考えられます(大野正道『非公開会社の法理 社団法理と準組合法理の工作』(システムファイブ、2007)42頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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