会社法の規定では、株式会社から合同会社等の持分会社に、会社の組織を変更することができます。その逆も可能です。これを「組織変更」といいます(会社法2条26号)。
同じような行為で、「種類変更」というものがあります。これらは、定款を変更することにより、たとえば、合名会社が合資会社や合同会社となったりする等、持分会社の中で会社の種類を変更することです(会社法638条)。会社法施行前の商法時代は、合名会社と合資会社の間で、種類を変更することができましたが、これは「組織変更」だと整理されていたと思います。
「組織変更」も「種類変更」も、会社の種類を変更することだと思いますが、何が違うのでしょうか。この点が気になり、考えてみました。
有斐閣の法律用語辞典(注1)をみると、「組織変更」は、法人格の同一性を維持しながら組織等を変更して、異なる種類の(異なる法律上の根拠を有する)法人となることといった趣旨の説明がありましたが、「種類変更」については掲載されていませんでした。
そうすると、たとえば、合同会社から合名会社への種類の変更は、異なる法律上の根拠を有する法人ではないということでしょうか。
ちなみに、会社法立案担当者の解説(注2)をみたところ、「種類変更」は、「社員の責任状況に会社の種類を合わせるという制度にすぎない」と説明されていました。つまり、合同会社が、社員の全員の責任を有限責任から無限責任にする定款の変更をすると、社員の責任状況が合同会社という会社の種類に合っていないので、会社の種類を合名会社にする必要があります。これは「組織変更」ではないようです。
こう考えてはみたのですが、なんとなく、わかったようなわからないような気持がします。
前記のとおり、「組織変更」は、異なる法律上の根拠を有する法人になることだとすると、「種類変更」は、異なる法律上の根拠を有する法人間の変更ではないということだと思います。
会社法2条1号を見ると、会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社を言うと規定されていて、これらは異なる種類の法人のように思えます。
そんなことを考えていたところ、会社法の条文の構成では、第二編が「株式会社」で、第三編が「持分会社」となっていることに思い至りました。
想像にすぎないのですが、会社法では、会社の種類の大分類として、「株式会社」と「持分会社」があり、持分会社にはその小分類として、「合名会社」、「合資会社」及び「合同会社」という種類があるのだろうと思います。
「持分会社」は、内部的には民法上の組合的規律の種類の会社であり、「株式会社」は、組合型ではなく社団型の会社なので、別の種類の会社類型だということでしょうか。
そんなことを考えながら、種類変更の条文(会社法638条)の表題をみると、「定款の変更による持分会社の種類の変更」(下線は筆者による)となっていました。
前記でいえば、大分類は変更にならないので、異なる法律上の根拠を有する法人への変更ではなく、同じ法律上の根拠を有する持分会社内の小分類の(種類の)変更だということでしょうか。
ここからは少し言い過ぎの部分になるかもしれませんが、株式会社にも、公開会社もあれば、公開でない会社もあります。取締役会設置会社もあれば、非取締役会設置会社もあります。株式会社の中にも、様々な種類の会社があるともいえます。これらは定款の変更により、変更を行うことになりますが、持分会社の種類の変更というのは、株式会社の中でのそうした変更と同じだとイメージできるのかもしれません。
注1)ただし、私の持っているのは最新版ではなく、第3版(2006年発刊)です。
注2)相澤哲編著『会社法立案担当者による 新・会社法の解説』(商事法務、2006)166頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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