
一定の手続を経ることにより、株式会社は持分会社になることができますし、逆に持分会社が株式会社になることができます。これを組織変更といいますが、組織変更をするには、債権者保護手続が必要だとされています(会社法779条、781条)。
この債権者保護手続は、なぜ必要とされているのでしょうか。債権者の利害に影響するからではあるのですが、具体的にはどのような影響があるからなのでしょうか。
たとえば、合名会社や合資会社が株式会社に組織変更する場合には、無限責任社員がいる会社から間接有限責任社員のみの会社になるからなのだろうと思います(注1)。
逆に、株式会社から合名会社や合資会社に組織変更する場合は無限責任社員が存在する会社になりますから、債権者には有利なようにも思えますが、計算書類の公告義務がなくなる、大会社であっても会計監査人の設置義務がなくなる等、会社債権者にとって不利なこともあるということなのだろうと思います(注2)
しかし、持分会社の中でも合同会社は間接有限責任社員のみで構成されますが、株式会社から、あるいは株式会社に組織変更する場合はどう考えるべきなのでしょう。
まず、株式会社から合同会社への組織変更は、前記と同様、計算書類の公告義務がなくなり、大会社であっても会計監査人の設置義務がなくなる等、会社債権者にとって不利なことがあるといえます。
次に、合同会社から株式会社への組織変更の場合はどうでしょう。この場合は、計算書類の公告義務が生じ、大会社になったら会計監査人の設置義務が生ずる等、会社債権者にとって有利なようにも思えます。
組織変更をした場合に、対価は株式に限られず金銭等の場合もあり、会社財産の流出を伴うこともありますから、そうしたことも意識しているともいえますが、そうすると、対価が株式のみの場合に債権者保護手続が必要な理由を説明することができません。
この点、相澤哲編著『立案担当者による 新・会社法の解説』(商事法務)203頁では、「物的会社と人的会社間との間の組織変更においては、当該会社に適用されるべき規律が大幅に変更されることとなり、債権者の利害にも多大な影響をおよぼすおそれがある」と説明されています。
たとえば、合同会社では、出資の払戻しは、大雑把にいえば、当該社員に計上されている資本剰余金の範囲ということに加え、定款の変更をして社員の出資の価額を減少した範囲に限定されています。それに対し、株式会社では、分配可能額の範囲であれば、その他資本剰余金からの配当が可能ですから、やはり、会社債権者にとって不利益といえそうななこともあるのだろうと思います(注3)。
以上のことから、やはり、株式会社と持分会社の間の組織変更については、債権者保護手続は必須なのだろうと思いました。
注1)これは合名会社や合資会社が合同会社に種類変更する場合(債権者保護手続はない)も同じように思いますが、この場合は会社法583条3項、4項で一定の保護が図られています。
注2)江頭憲治郎『株式会社法第9版』(有斐閣)1031頁
注3)法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第1回会議の参考資料3追加検討依頼事項の「第6 合同会社の出資の払戻し」に、これに関連する問題が含まれていました。
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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