
今日は、現在、パブリック・コメントが行われている商業登記規則の改正の関係です。この改正の大雑把な内容は、一定の要件を満たした場合には、会社や法人の設立登記について、特定の日付で登記簿に記録するというもので、休日に会社や法人を設立することができるようにするためのものです。
たとえば、1月1日は休日ですが、12月の法務局の最後の開庁日に1月1日に登記簿に記録することを求める旨を記載して申請すると、1月1日が設立日になるというものです(注1)。
詳細は、以下をご参照ください。
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080333&Mode=0
ところで、この設立登記を申請するのは誰でしょうか。一般的に設立登記を申請する場合は、設立される会社の代表者、株式会社でいえば、代表取締役が申請します。しかし、前記の例でいえば、会社が成立するのは1月1日ですから、その前である12月の法務局の最後の開庁日には会社は存在しませんし、代表取締役も就任していません(注2)。
商業登記法の条文を確認すると、商業登記法47条1項では、「設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によってする」となっています。
この「会社を代表すべき者」というのは誰なのでしょうか。この点について、過去の登記研究(注3)に記載があります。それによれば、この規定は、設立の登記を申請するのは、設立中の会社を代表する者ではなく、設立された場合に会社を代表する者から申請することを明らかにした規定だという趣旨を述べています。
よって、まだ、会社は成立していなくても、設立の登記は、設立された場合に会社を代表する者から申請することになるので、まだ会社が成立していない12月に申請する場合も、成立後に会社を代表する者が申請することになるのだろうと思います。ただ、まだ、会社は成立していませんから、事実上は、株式会社であれば、設立に際して代表取締役となる者、すなわち、「設立時代表取締役」ということになるのかもしれません。
実は、通常の会社の設立登記についても、法務局のウェブサイトの申請書式では、会社の設立時代表取締役が申請することが前提となっている記載があります(3ページ目の申請人の代表取締役の住所の注意書きに、「設立時代表取締役の住所」を記載すると説明されています。
ただ、申請書には「設立時代表取締役」の肩書ではなく、「代表取締役」の肩書が記載されています。設立された場合に会社を代表する者から申請するという規定になっているので、申請書も設立された場合の肩書を記載するということなのかもしれません。
申請書の添付書面のサンプルに、払込みを証する書面もありますが、この作成者の肩書は「設立時代表取締役」となっています。これも設立登記の申請人が作成する書類ですが(注4)、申請前に作成するものなので、そうなっているのでしょうか。ただ、資本金の額の計上に関する証明書も設立時代表取締役が作成するものですが、この作成者の肩書は「代表取締役」となっていますね。なぜなのでしょうか・・・。
日頃、あまり意識せずに申請書等を作成していましたが、いろいろ考えてみると、難しいものですね。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001331097.pdf
注1)申請の日の翌日が行政機関の休日であるときに認められるとなっていますが、たとえば、17時15分以降に申請した場合等、申請の日に受付にならない場合にどうなるのかは、この規則からは明らかでないように思います。
注2)もっとも、この新しい制度に限らず、通常の設立登記も、申請書作成時には会社は成立していませんし、代表取締役もまだ就任していないといえますが・・・。
注3)味村治「商業登記法の解説」(「登記研究」192号13頁、194号6頁)
注4)松井信憲『商業登記ハンドブック第5版』(商事法務)116頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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